高志森微博 第五回ゲスト:許冠文

2012.02.13 Mon

前回、『高志森微博』の第一回ゲストとして
出演した
許冠文先生ですが、
実は、その続きがあったようです。

道理で前回は、
映画の内容には触れられなかったわけだ・・・。

と言うわけで、『高志森微博』の第五回目、
『影視回憶(映像回顧録)』と言うコーナーに、
許冠文先生が再びご出演されました。
(※同じ日に二本撮りしたみたいです・・・)

◆高志森微博(第五集)
第一部ゲスト:許冠文(マイケル・ホイ
案内役:高志森(クリフトン・コウ)
収録日:20111222
放送日:2012年0129


オープニング

高:私もデビューして、いつのまにか36年が経ちますが、
この30数年、多くの方に助けられ、
何人もの才能ある諸先輩方から色々な事を学ばせて頂きました。
その内の一人が、許冠文(マイケル・ホイ)さんです!


映像回顧録

高:皆さん、今日の『映像回顧録』のコーナーは、大変光栄な事に、

許冠文先生とトークできると言う事で嬉しい限りです。

私は嘗て彼と映画制作でご一緒させて頂いた事があります。

彼はボスであり、脚本家であり、役者でもあられるわけで、

そんな彼の映画の監督を務める事ができたのは、ラッキーだと思っています。


※因みに高志森が視聴者に向かって話をしている時、
許冠文先生は、急須片手に自分で湯飲みにお茶を注ぎながら、
時折、カメラを意識しながらも、マイペースにお茶を嗜まれております。(笑)

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高:マイケル!私は、あなたと合作した映画の中で
『鶏同鴨講(ホンコン・フライド・ムービー)』が一番印象に残っているんですよ。
それで今日は、特別にこのシャツを着てきたんですよ!
許:私の顔を立ててくれたわけですね!(笑)

と言いながら今度は、高志森さんにも、
お茶を注いであげるマイケル♪(笑)

m.hui20120213-3.jpg


高:
そうなんです!皆さん、あの映画の中で、マイケルは
お義母様からお金を借りるシーンがあり、
最新のファッションでキメたつもりが、お義母様から“この服”はまるで、
「絵の具をひっくり返したみたいな柄ね!」なんてバカにされて・・・。
許:アハハハ


あれ?実際のストーリーと少し違うような・・・
それとも私の記憶違い?(笑)
確か、お義母さまが、
マイケル演じる“老許”にあのシャツをプレゼントした所、
“老許”の息子が、「絵の具をひっくり返したみたいな柄だね」
と言ってバカにしたような・・・

高:当時、私もマイケルと一緒にこのコメディのストーリーを考えたんですよね。
コツと言うものがあるなら、それがコメディを考える上での重要な鍵になってくるのですが、
つまり、多くのコメディにおける“笑い”と言うのは、台詞にあるんですよね。
役者の会話が面白いこと、台詞がユーモアに富んでいる事が大事で。
しかし、もう一つ大事な事があって、それは、コメディの面白さは、
ビジュアルから来るものだと言うことです。
この事について、当時もマイケルとよく話し合いましたよね。
その『鶏同鴨講(ホンコン・フライド・ムービー)』での経験談は、今になっても・・・
例えば、私が演藝学院で学生に講義する時は、あの時のマイケルの言葉を
いつも引用するんですよ!勿論、マイケルの言葉として出典を明確にして話すわけですが、
ビジュアルと、ダイアログ、視覚と聴覚の話になると、
あなたは自分の考えに揺ぎ無い自信を持っていますよね。

許:観客と言うのは、常に人が人を見ているのです。
目に見えるものが大事なのであって、台詞はそれほど重要じゃないと私は思うんです。
なぜなら、特にこのご時世、人と人の間に生まれる言葉と言うのは、殆どの場合、
ま、99%がウソなのですから。頭のいい人は、どうせ作り話なんだからと、
なんで真面目に聞かなくちゃいけないのかと思うわけです。
では、どうするのか!それは話す者の姿、眼差しに掛かってくるんですよ。
話し手に、どれだけ誠意があるのかは、その時の仕草によるんです。
それは、あなたが全く相手の目を見ずに、「アイ・ラブ・ユー」と言うのと同じです。
今日まで随分映画を観てきましたが、以前、私が市場に行くと、
野菜や魚を売っているオバチャンに、こう言われた事があるんです。
「ホイさん、私が映画を見た本数は、あなたよりも多いハズだよ!
私は、仕事が終わるとたいてい45本のDVDを観てるんだからね。
あんたどうだい?そんなに観ないだろ?」って。
「私は、あなたよりもっと観てますよ!ストーリーの事なら、
私に聞けばすぐに答えられますから」って私は言うんですけど。
普通の人の場合、こんなにも多くの映画を観る時は、
台詞がどうだの、ストーリーがどうだの、そんな事よりも、
唯一つ大事なのは、“フィーリング”なんですよ。
だから、映画の中で表現する時に、例え会話がなくても、
いや、一番いいのは、言葉なんて要らないんですよ。ラブストーリーだったら特にそうです。
何度も何度も、相手が「アイ・ラブ・ユー」と言う言葉を聞きたいですか?
必要ないでしょう!ボディーランゲージで十分伝わるんですから。
ある段階に達したら、身振りだけでいいんですよ。
これは、私がずっと信じている事なんです。だから一番いいのは、
映画を撮るなら、一番の理想は、一言も話さない事、台詞が全くない事です。
台詞なんて要りません。或いは二言三言で十分です。
最近のドラマを観たのですが、問題は台詞が多いことですね。
もうどう見ても明らかな事を、延々と喋り続けるんですよ。
もう解釈しなくてもいいからと思うのに、表情を見れば、
あなたが彼を嫌いな事ぐらい分かるのに、口に出さなくてもよいのに、
「私はあなたが嫌いだって知ってる?教えてあげるわ、私はあなたが嫌いなのよ!」
こういうのは、時間の無駄ですよ。必要ありません。
だから映画を撮っていて一番の理想は、“笑う”ことです。
高:はい
許:笑う時は、心が表れるものです。笑いたければ笑う、そこに言葉は要らない。
これが私の最高の理想なんです。映画には、起承転結の構成がありますから、
視覚だけでも理解できるように少しずつ作り上げていく事ができます。
そして、もう一つ大事なのは、我々(作り手)がこうなんだよと観客に思わせるのではなく、
観客自身が自発的にそうなんだと思えることです。見る人も心からそうだと確信できた時、
その映画を心から気に入ってくれるのではないかと私は思うんです。

高:私が思うに、最近のドラマですが、台詞があんなに多いのは、
食事の支度に忙しい主婦のためだと思うんですよ。彼女たちが鍋を振っている時、
突然TVから台詞が聞こえなくなったら、何があったんだろうって。こりゃイカンって。
ストーリーが分からなくなるわけですからね。
許:アハハハハ!
高:途中で手を止めてTVの方へ駆けて行くかもしれませんしね。

許:
しかし、映画の場合は、気をつけなければなりません。
チケットを買った後、真っ暗な室内に座り、2時間もの間ずっと
登場人物の動きだけに神経を集中させているわけですから。
髪をなでる仕草だったり、指一本一本だったり、目の動きだったり。
この人物は何をしたいのかが知りたい。何をしようとしているのかを
推測したいんですよ。仮に人物が、本当にある大事な仕草をしてみせた時、
観客にとっては、それを見たかどうかが大事なのです。
また、他の人がそれに気づいていない事が嬉しかったり。
だから、ハッキリ言ってしまうと、面白みがなくなるんですよ。


高:私がAPA(香港演芸学院)で講義をする時、
私はいつも
あなたの過去の作品を題材に使うんですよ。
例えば、名作『半斤八兩(
Mr.Boo!)』。
まず一つ目は、ニワトリで体操をするシーンです。
“偶然に誤解が生じる”と言うものですが、
あれは所謂、“勘違い(すれ違い)コント”の名シーンですからね。
二つ目は、厨房での格闘シーン。

ヌンチャクが出てくるわ、ジョーズが出てくるわ、色んな物が出てきます。
当時、この二つのシーンは・・・いや、こう言ってよいのか分かりませんが、
あなたの初期の作品に見えるこう言ったシーンは、どのようにして思いついたのですか?

許:この映画は・・・もう随分と前の話になりますね・・・。あの時は、許冠英も・・・・・・・
はぁ〜・・・いやいや、ハハ!私は、特にビジュアル効果が好きなんですよ。
先程も言いましたが、一番の理想は、台詞がないことですから。
ネタのアイディアは、いつもどこから来るのかと言うと、日常生活から得たものなんです!
あのシーンは、私はいつも自宅の書斎で脚本を練るのですが、
(私の部屋から)遠くリビングの右端にキッチンが見えるんですよ。
当時、女性の太った家政婦さんを雇っていまして、彼女は鶏料理を作るのが好きだったんです。
彼女は、ニワトリの毛をむしり取り、当時は生きたニワトリが売ってましたからね。
絞めた後は毛をむしり取るわけです。そして彼女は毎回、テレビを見ながら
ニワトリを絞めるのですが、私は心の中で思ったんですよ。毎回テレビを見ながら作業したりして、
自分が何をやっているのか分からなくなる事はないのだろうか?って。
テレビに気を取られ、失敗する事もあるんじゃないかと。
そしたら、ふと閃いたんですよ。ある日、彼女がニワトリを絞めている時、
もし、テレビで体操をやっていたとしたら、ニワトリで体操をするんじゃないか!
そしたら、面白いなぁ、と。だからあれは、日常生活から、私の家政婦を見ていて
閃いたものなんです。


高:じゃあ、あの厨房の格闘シーンは?あのシーンは、本当に、
本格的なアクション映画に見られる“武術振り付け”だと思うのですが。

許:香港のカンフー映画は、当時とっても人気がありましたが、
あの時、少しずつですが勢いが衰えていたんですよね。
新しいアイディアがなく、毎回あの幾つかのスタイルしかないですから。
私は武術の事はよく分かりませんが、あの時は、そんな時だからこそ
全ての武術を代表するような、アクションシーンを取り入れるべきだと思ったんです。
それも、コメディの視点から見たカンフーです。
私の目には、カンフーはとても幼稚なものに見えたので、
あんなに動作が多くて、実際には一撃で倒せるのに・・・って。
高:ハハハ!
許:それで、これまでに私が観てきたカンフー映画の中から、
私がこれは滑稽だと思う動きを、例えば、無駄にヌンチャクを振り回し続けたり、
そう言うのを全てミックスさせてみる事にしたんです。
あのシーンは全部で15分あったと思いますが、あれは、私なりに
コメディの視点で再現したカンフーなんですよ。ソーセージがちぎれたり、
後は覚えているのは・・小麦粉をぶっ掛けられて、でも穴の開いたオタマで遮ろうとしたがために
高:結果、粉が顔中に点々と・・・
許:あのシーンは貴重な思い出です。単に“笑える”と言う事の他に、
コメディのためにあんなに長い格闘シーンが撮られたのは、
当時の香港では初めての試みでしたから。それもそのはずです。
あの映画には、沢山のその道の達人たちが制作に関わっていたのですから!
アクション指導には、サモ・ハン・キンポー(洪金寶)が手伝ってくれましたし、
企画を手がけてくれたのは、ジョン・ウー(呉森)でした。
とにかく多くの香港の第一線で活躍する人材が、当時は皆私の映画のために
協力してくれたのです。こんなに幸運な事はありませんよ。
高:あの時は、彼らの成長期でしたからね
許:そうですね。偶然にもこんなに多くの名手が集まったからこそ、
あの特別なシーンが撮れたのだと思います。


高:私は、『鶏同鴨講』であなたと一緒に仕事が出来た事がラッキーでしたね。
『鶏同鴨講』の中に、師匠から技を盗むシーンがありますが、あれは確か
あなたのお気に入りのシーンですよね?一緒に構想を練っていた時、
あなたは、特に“中国人”を強調していましたね!師匠と言うのは、弟子に技を伝授する時、
決まってある部分を秘密にしておくものだと。その次に考えたのが、
弟子は、師匠がアヒルを焼く姿を見て技を盗もうと考える。
そこで、その様子を“動き”だけで描くと言うシーンが生まれたんですよね。
許:ハハハ!そうでしたね!
高:それで後から、ジェームズボンドの音楽をBGMに加えることに。
スパイ映画っぽい雰囲気を出そうと!あのシーンは、あなたにとって特別な・・・
とても感慨深いものがあるように窺えましたが。

許:あのシーンについては、あなたとエライ長いこと話し合ったのを覚えていますか?
高:随分長い事・・・
許:なぜなら、あのシーンは、あの時一番の見せ場でしたからね。
とても共感できる内容ですし、皆、師匠から技を学ぼうとする時、
師匠が教えてくれるのは、いつも完璧ではないような、何か言い惜しみしているように、
どこか感じているものですからね。特に、料理人の世界では、
仕上げの調味料は秘密にしていて、95%しか伝授してくれない。残りの5%は隠している。
これは皆分かっている事ですから、共鳴を得られるはずだと。
高:自分が教えた弟子に追い越されるかもしれないですしね
許:だから弟子は、師匠の動作を見て技を盗むしかない。何を加えるべきかと。
それがとても笑えるんですよね。構造に視点を移すと、
一つは共鳴できること。もう一つは、ビジュアルで見せること。
こうやっているように見せかけて、でもそうじゃない。
相手があっちを見ている隙に、私は・・・と言う風に。
時に私がふと考えることなのですが、
もし、あのシーンが私のオリジナルで、それに皆が共感する。
しかもそれは、ビジュアルだけで見せる事ができる。ダイアログは要らない。
そんなシーンが出来た時の事を考えると、私は興奮するんですよ!
じゃあ次にどうするか。このシーンは、どのように組み立てるべきかを
何日も寝ないで考える。あの時も、あなたと一緒に何日も何日も考えましたよね。
付き合ってくれたあなたには感謝していますよ!


高:あともう一つ何日も掛けて考えたシーンがありますね。
後半、ライバル店にネズミを仕込まされると言うシーン。
店の天井のあちこちから、ネズミが落ちてきて、
最後はスタッフが一丸となって、店のピンチを救おうとする。
確か我々が食事をしている時、あなたは食べ終わると、突然思いついたと言って、
シーンを追加撮影することになりましたね。それが、あの衛生検査官が去ろうとした時に、
ネズミが泣き声を出したことで見つかりそうになった後のシーン。
ネズミを即座にお椀で隠すと、他にも幾つかお椀を出して来て、
お椀の位置を動かしながら相手に当てさせると言うアイディア。
さぁ、ネズミが入ったお椀はどれでしょうって!
あなたは食事が済んだ後、突然このアイディアを閃いて、
急遽追加する事になったんですよね。

許:あれは、私が“燒鵝P粉(※1)”を食べに市場へ行った時に、
ある一人の“街頭詐欺”を見かけたんですよ。彼は三枚のカードを並べ位置を何度も変え、
当たりのカードがどれか客に賭けさせると言うヤツです。
でも皆、彼がイカサマをしている事ぐらいは分かり切っているんですよね。
まるで、私が閃いたあのシーンみたいに。それでもいっそのこと、
どのお椀にネズミが入っているか当てさせようと。
でも、当たりのカードを指されても、彼はスリ替えてしまう。このカードですね?と言って、
実は別のカードとスリ替える。客には動きが早いから見えないだけで。
私は市場でこうしたイカサマ師を34人ほど見掛けたんですよ。
だから、私の作品の題材は、いつも日常生活から生まれるんですよ。

1:ガチョウのローストがデンと乗ったライスヌードル

高:だからこんな言葉がありますよね。
アイディアと言うのは、元素(基本の要素)を新たに組み合すことだと。
先程、マイケルが話して下さったエピソードからもお分かり頂けるように、
実は、生活の中に沢山の異なる“元素”が転がっているのです。
そして終いにはそれが、コメディのネタになるわけです!

(日訳:管理人 Baakkei

※動画は⇒こちら
COMMENT
いやはや、またまた超貴重なトークの再録・翻訳ありがとうございます!

いつも思うのですが、翻訳が自然で、文章の流れが非常に上手く、

読んでいて惚れ惚れします!

我々ホイ兄弟フリークにとって大変貴重なトークなので、

ブログやmixiで紹介しても、良いでしょうか?
Posted by きんこん at 2012年02月24日
★きんこんさん

あーコメント有難うゴザイマス!!!^^
ずっと反応がなかったので、きっと
皆さん既にご存知のエピソードばかりなんだろうなぁと
思っていたんですよ。^^
そうですか!貴重でしたか!ヨカッタ♪わー♪(笑)

それから、お誉めの言葉、ホントに恐縮です。
でもすごく嬉しいです。励みになります!
この所ずっと家の用事でかなりバタバタしておりまして、
翻訳作業までなかなか手が回らないのですが、
マイペースに更新していきますね。よろしくお願い致します。

>ブログやmixiで紹介しても、良いでしょうか?
勿論ですとも!!記事のURLをリンクして頂ければ、
後はご自由にお使い下さい。
(↑厚かましいお願いでスミマセン ^_^; )
Posted by Baakkei at 2012年02月24日
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